参考【白石忠志・東京大学大学院法学政治学研究科教授の「5つの指摘」】

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  1. 「レコード輸入権」が創設されると、国際的な市場分割につながることになり、日本の消費者に影響が及ぶのは必至である。再販制度という独占禁止法の極めて例外的な規定により、国内市場での小売競争もない。「国内でも競争がない」「国外からの競争圧力もない」ということになるので、国内での消費者への利益還元からは必ずしも適切ではない。
  2. 欧米の洋楽レコードの取扱いをどうするのか。「レコード輸入権」が創設されて、洋楽のみは対象としないことが果たして可能なのか。可能であるとして、国として内外無差別という措置をとらなければならないという世界的なルールの中で、洋楽のみを対象としないことが国際的に通用するのか、慎重に検討する必要がある。
  3. 「レコード輸入権」を創設する根拠として挙げられている、音楽創作者の創作インセンティブの確保については、海外進出で、外国で安く売ろうとしていること自体が、その値段でも十分に音楽創作者の創作インセンティブを確保できることを明らかにしているものであり、日本の消費者に高く売っているので、外国で安く売っても十分に利益があるというなら、日本の消費者を軽く見た意見になることになる。
  4. 外国における海賊版に対抗するため、当該外国では安く売らなければならないという意見に対しては、海賊版問題は、当該外国の知的財産法制の充実に待つべきところであり、当該外国の知的財産法制の十分でないことの「ツケ」を日本の消費者が払う必要はない。
  5. 消費者利益の還元について様々な措置が説明されているが、消費者への利益還元のための最もよい手段は「競争」によるものであるということだ。「競争」は万能というわけではないが、競争の可能性は残しておく必要はある。

この提言は「文化審議会著作権分科会平成15年第6回」で報告されたものです。

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第6回)議事要旨
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/03121001.htm
白石教授のサイト
http://www.tadashishiraishi.net/

朝日新聞(東京本社版)・2003年12月13日付夕刊掲載のコメント

消費者につけ 筋違い

白石忠志・東京大学教授(経済法の話)

問題の前提に、日本での価格が海外より高いことへの消費者の不信がある。海外で利益が出るのなら、日本の消費者にも安く売れることになる。「海外で横行する海賊版に対抗するには安く売らなければならない」という主張があるが、それはその国の知的財産保護法制の充実に求めるべきで、つけを日本の消費者が払うのは筋違いだ。再販制度により国内での小売り競争のない現状に加えて、国外からの競争も法的に規制する必要があるのかどうか検討する必要がある。

公開:2004-04-06 更新:2004-04-06