わかりやすいFAQ #2

このサイトは、第159回国会に提出された「著作権法の一部を改正する法律案」に関連する情報をまとめる目的で開設されました。オリジナルは2004年6月16日に閉鎖され、情報保存の目的で公開されているこのサイトも更新停止されています。

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FAQ目次

Q. 元々、法案作成時に問題視されていた「邦楽の逆輸入盤」は著作権法でしか禁止出来ないのですか?

A. そんなことはありません。

まずは企業の自主努力(現地の卸売契約で「輸出を前提とした商品の引き渡しを行わない」ことを徹底することなど)が求められます。それでも横流しが横行しているなどの場合は、国際通商ルールに則りセーフガード措置を実行するなどの方法を取るべきであって、著作権法で恒常的にレコード会社の指先一つで(法案では「権利者の得ることが見込まれる利益が不当に害される場合」と言う条件が求められていますが、日本は「世界唯一」の再販制度によって恣意的に値上げさえすれば「権利者の得ることが見込まれる利益が不当に害される場合」をいつでもレコード会社が作り出せる国です)輸入禁止が実行されるような規定を創設することは、対象国からWTOへ提訴されるリスクを始めデメリットの方が圧倒的に多く、実行すべきではありません。

なお、アメリカでは1997年のQuality King事件連邦最高裁判決によって合衆国著作権法第602条(a)の輸入権は「アメリカで生産して海外へ輸出した商品には適用されない」ことが確定しています。

和田・市川「無許諾逆輸入の著作権に対するファーストセール・ドクトリンの適用について」(ソフトウェア情報センター)
http://www.softic.or.jp/YWG/reports/Lanza/Lanza.html
上記判決の訳文(同)
http://www.softic.or.jp/lib/cases/Q-King_v_Lanza.html

Q. 文化庁や経済産業省は「法案成立後は値下げを指導する」と、業界は「成立したら値下げに努力する」とそれぞれ言っていますが?

A. 全く根拠が無い、どころか今回の法案は輸入禁止を実行する条件として「権利者の得ることが見込まれる利益が不当に害される場合」を求めているのでレコード会社としては値下げをすればするほど「見込まれる利益が不当に害される」根拠を失うことになってしまいます。よって、逆に値上げを行って「見込まれる利益が不当に害される」状態を恣意的に創出する方がレコード会社にとっては都合が良いのです。しかも、日本は商業用レコード(法律用語。音楽用CD・カセットテープ・レコード盤などの録音物全般を指す)の再販価格維持が「世界で唯一」強制可能な国です。現在は輸入盤が値下げ圧力として機能していますが、輸入盤が一切排除されて競争原理が全く働かない状態で値上げし放題になるのは当然の成り行きであり、むしろ文化庁が「見込まれる利益が不当に害される」と言う条件設定を行って再販制度の悪用を業界に奨励している疑いさえ有るのが今回の法案なのです。

Q. 業界や推進派議員は「世界の65か国でやっているんだから日本もやって当然だ。先進国でやっていないのは日本ぐらいで恥ずかしい」と言っていますが?

A. そもそも「65か国」と言う数字自体が根本的に間違っています。本間忠良・日本大学法科大学院専任教授(昨年12月まで公正取引委員会員)も指摘していますが、この65か国中18か国はヨーロッパ連合(EU)ないしEEA(ヨーロッパ経済圏)に加盟しており、EU加盟国15か国はEC指令で物品の移動が完全に自由化されているので「域内での市場分割」は固く禁じられているからです。よって「65-14」で「41か国・地域」が正解。さらに付け加えると、今年5月から東欧・地中海の10か国がEUに加盟するのでこの「41」と言う数すらさらに減少することになります。それと、いわゆる「先進国」の中でもオーストラリアは1998年に並行輸入禁止条項を廃止して音楽用CDの輸入を自由化していますし、隣国のニュージーランドも輸入権ないしそれに類似する規定は有りません。また、アメリカでは合衆国著作権法第602条(2)項に輸入権の規定が存在しますが、1997年に連邦最高裁が「アメリカで生産され、輸出された商品にこの条項は適用されない」と判断しており、今回の法案のようないくらでも拡大解釈が可能な運用が実施されている訳ではありません。

ネット音楽とアナルコ・キャピタリズム(本間忠良・日本大学法科大学院専任教授)
http://www013.upp.so-net.ne.jp/tadhomma/AnarchoMusic.htm
「文化審議会著作権分科会報告書(案)」に関する意見(小倉秀夫弁護士)
http://www.ben.li/article/PubCom200312.html

関連する質問

Q. 「海外のレコード会社が日本への洋楽CDを輸入(輸出)禁止にして日本で儲けた利益には日本国内で税金が一銭もかからなくなる」って本当ですか?

A. 本当です。但し、厳密に言うと「アメリカのレコード会社が」です。どうしてそうなるのかと言うと、今国会(第159通常国会)で批准された日米租税条約(新条約)により、二重課税防止の相互協定が7月から両国で実施されることになったので「アメリカの企業が過半数の株式を保有する日本現地法人」のライセンス収入や配当金は日本での課税義務が全額免除されます。いわゆる「5大メジャー」の日本現地法人では東芝EMI(EMIの総本山は英国だが、日本の東芝EMIはアメリカのCapitol EMIが55%の株式を保有)、ワーナーミュージック・ジャパン、ユニバーサルミュージックの3社がこれに該当します。また、5大メジャーの残りの2社であるソニー・ミュージックエンタテインメント及びBMGファンハウスは米国現地法人が統合持株会社「Sony BMG」をニューヨークに設置したので、両社の日本現地法人がいずれこの持株会社の直轄となった場合はやはり他の3社と同様、日本での課税が全額免除されることが予想されます(なお、EUでSony BMGの経営統合がEC競争法の寡占規制に抵触する恐れがあるとして予備調査が開始されており、解体命令が下される可能性もあります)。

輸入盤全体の8割以上を占める洋楽を大部分排除し、日本では再販制度で世界一高いCCCDを売り付けて荒稼ぎした分の儲けは日本の税収増にも繋がらず全てアメリカへ吸い取られて行く…… そんな状態に陥ってしまう引き金になりかねない今回の法案を「国益」と称して推進しているのは、日本の音楽愛好者に対する「詐欺」に等しい行為としか言いようがありません。

Q. 審議会で反対意見は出なかったのですか?

A. 山ほど出ましたが、業界と文化庁のスクラムで封じ込められました。著作権に関する事項を審議するのは文部科学大臣の諮問機関である文化審議会著作権分科会ですが、この分科会は音楽は無論のこと映画・出版・プログラムなどの権利者を代表する業界団体から選出されている委員が多数を占めていて、その他では学識経験者や弁護士・図書館関係者・消費者団体代表が参加してはいるものの、この問題を審議した法制問題小委員会の内訳は「権利者代表14:学識経験者4:弁護士1:図書館関係者1」と言うどう考えても「賛成多数」にしかならないような人選でした。しかも、消費者団体選出委員2名のうちの1名である小熊竹彦・日本生活協同組合連合会政策企画部長が再三にわたり法制問題小委員会に参加させて欲しいと文化庁に求めましたが、文化庁は理由すら明かさずにこれを拒否し続けていました。結局、法制問題小委員会では「権利者代表14名が賛成・その他6名が反対」と言うことで報告書案には「賛成多数」と記載されたのですが、こうした背景を考えると公平かつ客観的な立場での議論が行われていないのは明らかであり、しかも文化庁があからさまに業界の肩を持つ姿勢であることと併せて今後、徹底的に追求されるべきでしょう。

小熊竹彦『「レコード輸入権」問題について』
http://www.shodanren.gr.jp/database/083_02.htm

文化審議会著作権分科会議事録

第10回
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/010/03101701.htm
第11回
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/010/03120801.htm

Q. 賛成している議員は本当に「洋盤の輸入禁止」を望んでいるのですか?

A. そう言う議員もいるにはいますが、全員が全員そうだと言う訳ではありません。

賛成している議員は主に

のどちらかです。前者の誤解が解ければ話は早いのですが、その誤解を解くのがなかなか難しいのが困りもの。また、後者は「そもそも価格競争だけで海賊盤対策を行うのは正しいやり方ではない、対象国の政府に著作権法を国際水準まで高めるよう働きかけるなどの長期的視野に立った対策が必要。また、逆輸入盤が激増すると言うのは対象国の経済が今後も全く成長しないことを前提にした机上の空論でしかない」と言うことを主張する必要があります。こうした誤解が解ければ、現在は賛成と見られる議員が問題点に気付くことは(その議員が洋盤の輸入禁止を百も承知で推進しているのでなければ)十分に有り得ますので、感情的にならず冷静に今回の法案の問題点を説明するよう心がけてください。

Q. 日本政府は外圧に弱いから、アメリカ政府に反対してもらったらいいのでは?

A. それは出来ません。アメリカ政府は、今回の法案に大賛成です。全世界の商業用レコードの8割以上を支配する「5大メジャー」(BMG・EMI・Sony Music・Warner・Universal)は全て日本現地法人を置いており、アメリカの値段(約12ドル)で日本へ輸出するよりも日本で輸入を禁止して同じタイトルを日本では「世界唯一」の再販制度で2倍前後の値段を付けて「国内盤」として発売する方が儲かるからです。高い国内盤と競合する輸入盤を禁止出来るのなら親会社にとってもそれに越したことはありません。そして、今年7月から発効する日米租税条約によって日本ではライセンス収入や配当金にかかる税金が一切かからなくなり、その分だけアメリカの税収が増えるのですからアメリカ政府に反対する理由は何一つ存在しないのです。むしろ「外圧」に期待するのであればこの法案の“表向き”の対象とされている韓国・中国・台湾・フィリピン・マレーシア・シンガポール・タイなどのアジア各国・地域に対して、法案がこのまま成立したら日本をWTOへ提訴するよう要請する方が「現実的」でさえあります。

ちなみに、この「輸入権」を1996年の世界知的所有権機関(WIPO)著作権条約締結会議で(「海賊版対策」を表向きの理由に掲げて)提案したのが他ならぬアメリカです。この時は、日本を含む圧倒的多数の参加国が反対したのでアメリカの提案は否決されました。また、1998年にオーストラリアの連立与党が著作権法にあった並行輸入禁止条項廃止法案を国会に提出した際はアメリカ大使館が反対を表明しています(法案は僅差で可決され、それ以後オーストラリアでは著作物の並行輸入が自由化された)。

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公開:2004-04-06 更新:2004-04-08