ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社

著者:岩崎裕美子

“ブラック”レベルの会社で身をすり減らし働いた経験の後、自分で会社を立ち上げ、タイトルのような会社にした社長が書いておられます。

多分若い人が読んでもいまひとつ分からないかも知れない。
管理職やある程度上役になり、会社の運営・改革などに携わる人には身に染みるのでは無いかと思うし、そうあって欲しいと思います。

とても実感があるのは、良いことのエッセンスだけを書いているのでは無く、自らの自分史・会社史を振り返り、失敗と成功をきちんと書いているということなのだと感じます。

短時間労働・女性活躍。
この言葉を良く聞くようになっても、どこの会社も、一向に変わる気配すらありません。
何が“真因”なのでしょうか。

その中で短時間と女性活躍(社長と一緒に起業したナンバー2も含め、ほぼ女性社員だけであり、常に誰かが産休を取っているほどの状態で出産後職場復帰率は100%)のお手本とも言える会社なのでしょう。
いわゆる産休や産後の時短労働については、やはり、そうではない従業員との“格差問題”は皆無では無いと正直に言っています。

しかしながら産休と言っても実際は半年も前から準備出来ることなのだから、きちんと業務棚卸しや業務の再分配、不要業務の廃止やアウトソース、それでもダメなら非正規雇用による対応等が充分可能なはずだと言います。

確かにその通りです。妊娠が判明してから産休が必要な状態になるまでは半年以上の期間があるのだから、それで引き継ぎが出来ないような会社なら、それ自体がおかしい、という意見は正当でしょう。

これも多くの会社が現場に業務を曖昧な形でぶん投げて、個々の社員も自己流で勝手なやり方で仕事をしがちであり、その統制が取れていないということが非常に多いでしょう。
ある人が入院したり、突然退職したり、もっと言えば定年退職ですらその後に混乱しているのが実態であり、その要因が上記の“自己流=不明瞭な業務進行”ではないでしょうか。
この点でも「女性活躍」を阻んでいる状況というのは、単にそれ以前の業務進行、会社としての業務把握のいい加減さが招いたことと言えます。

時短勤務についても、実際には一時間程度しか差が無いのだから、大差ないといいます。これもその通りです。
この会社がそもそも残業ゼロが基本であると言う大前提があります。
きっちりと8時間対6時間と考えても、所詮はたかが2時間です。
その分、集中して働いて取り返せるレベルと考えているし、何よりも本人が一番申し訳ないと思っているはずだということです。
もっとも、この会社はほぼ100%女性ですからある程度は「お互い様」ということもあるでしょう。
しかし「男も育休」という論も持ち込めば、男がいても「お互い様」であるはずなのです。

更に言えば職場完全復帰後はまた完全に元に戻す、という前提があるので、所詮は期間限定である、と言う意識も大きいでしょう。
ずっと続くのなら反発も半端ないでしょうが、せいぜい1年程度で元に戻るとすればたいしたことでもないでしょう。
双方にとって歓迎すべき事ですし、これは職場復帰率100%の要因でしょうし、その実績があるから不満も出ないという良い循環が成立しているのだと思われます。

これらのことも「女性活躍」云々以前の、現在の職場としての問題とえいます。
そもそも「残業ゼロが基本である」ということを大原則として認識しなければいけないはずです。
この点が男女の格差に繋がっているわけですし、もっと言えば男女関係なく不測の大病を患った後の職場復帰を考えても、周囲が残業ゼロであれば復帰感が大きく異なります。

残業100時間とか過労死ラインがどうこうとか、そんな“低レベル”の論議で揉めるようでは女性活躍なんて程遠いのです。
言うまでも無く「ライフプラン」「ワークシェア」「在宅勤務」観点でも同じです。

残業はあくまで「突発的な対応」だけに限るのが大原則です。
常態化しているとすれば、そもそも業務配分として問題であるという認識に立たないとおかしいのです。

長時間残業状態が“当然”であり、“そうでもしないと会社が維持出来ない”ということは、いわゆる「レッドオーシャン」市場で業務をこなしているだけという何よりもの証左です。
そこには価格競争しかなく、残業代でごまかして人件費を浮かそうとしている、もしくは強制無賃労働(俗に言うサービス残業)でごまかしているだけなのです。
(多くの経営者は「現状の割増率なら、一人増やすより安上がりである」つまり金勘定でいえば人を減らして残業をさせる方が得なのです。だいたい5割増しがボーダーラインらしいので、法定割増しをここまで上げると、少なくとも世間体は気にして遵法はする会社なら間違いなく残業はやめさせ、人を雇うようになります。まあ今の政府はその雰囲気すらないようですが)

この著者自身が、最初に就職した会社で「限界に近い労働時間」で働き続けた結果、絶望したという経験もかかれています。
そして同じ男の管理職も一斉に「折れて」辞めたということも書かれています。
絶望というのは現状がどうこうよりも、このまま未来(定年になるまで)この状態が続くんだ、と気がついたときに起きるのです。

もうひとつのキーワードは「やる気」。
これも「社員のやる気を起こさせるには」というのは永遠の課題とすらされていると思いますが、残業ナシを実現し“福利厚生”をいくら充実させても、これがないと会社としてダメだ、ということを言っています。
普通の会社では難しいとされているこの2つを徹底した上で得た教訓であるからこそ、この発言に重みがあります。
この2つを充実させても「会社が暗い」状態に陥ったと書かれています。
社長である自身も含めて様々な形で社員のやる気を削いでしまっていて、それ故に会社は暗くなったのだとようやく気がついたということが書かれています。

会社の雰囲気が暗い、ということはよく言われます。
それは皆がやる気を失っているせいだとしています。
上役がそれではダメと頑張れば頑張るほど、下は“言いなり”にならざるを得ず、事態が悪化していく、と述べています。
「元気を出せ」とか言うだけとかムダですし、いうまでもなく叱責は論外ですし、イベント開催やら飴を与えても無意味であるとしています。
突き詰めるところ“自己承認欲求”の問題であり、社員を人として信じ、任せ、適性に評価すると言うことが重要、という話になります。
当然これは難しいことですが。

そんなに内容が重い本でも無いので、一人の起業社長の体験記として読んでも面白いと思います。

読んでみて、私自身、とても感じるところがありました。

正直言えば、起業された会社が化粧品の企画販売会社であり「なるほど利益率は高く出来るよなあ。だからこそ出来る部分も多いよなあ」と思う点はあります。(そういうターゲットとしてビジネスを選ぶというのは当然という論は理解出来ますが、大きい会社ほど難しいのも事実です。)
だからといっても、著者自身で何度も失敗に陥ってるわけで、その道を選んだからと言って順風満帆だったわけでもない、ということも綴られています。

言ってしまえば「1ベンチャー企業の成功記」であり「コンサルティング会社」等の寝られたノウハウではないので当然とはいえます。
だからこそ、読み手がきちんと咀嚼して感じることが重要です。
この疑似体験を元に、自分自身、自分の会社(職場)ではどのように当てはめられるんだろう、と考えることが重要なのだと思います。
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