半田付けのコツ・その2

始めに

実際の反響はあまりこないものの、Webサーバーのログをみると前回の半田付けの記事は結構読まれているのが感じ取れる。
検索エンジン経由でみつけて、なにかの間違いで開いてしまった人もいるのだろうか。 逆にいえばこのような記事を欲しい人と、その情報記事の比で考えて、記事のほうが希少であるとも言える。
前の記事で「書こうと思った動機」はさほど間違っていなかったということなのかもしれない。

正直に申し上げると実はこの記事はあまり筆が進まなかった。
珍しくも次回予告をしてまったこともあり、書かなくては、という気持ちが逆にそれがプレッシャーとなってしまったのかさらに遅筆にしてしまったのだった。
あまりに遅いのも意味がないし、どうせ完璧なのはできないと諦めてこの程度で勘弁してもらうということで掲載したいと思う。

と、言い訳はこの程度にしておいて始めましょうか。

最初にざっとおさらいを含めつつ薀蓄から始めたい。

半田とはなんなのか

半田とは金属である。鉛と亜鉛の合金である。
普段は固体であり、半田ごてをあてて熱を加えることで熔けて液体となる。
こてを外すと半田から熱が逃げて再び固体に戻る。
氷に熱を加えると溶けて液体の水となり、氷点下零度以下の場所に置いて冷やすと固体の氷となるのと同じことだ。
数ある金属の中でなぜ半田を使うのかというと
錫と鉛の合金が安価であり、コテのようなもので熔かせるほど熔ける温度(融点)が低い事、導伝性が高い事、劣化(酸化、つまり錆びること)が小さいこと、人体に対してさほど有害ではないということが理由に挙げられる。
金属というのは一般的に融点が高く、鉄などは家庭で得られる熱では熔かすことが不可能なほどである。せいぜい柔らかくはなるがせい一杯である。
もっとも一般的な金属では、であって、危険だったりレアな部類にはいるものでは別の話ではある。

危険と言えば実は鉛は危険な重金属の部類に属する。
危険度は低いが体内に取り込むのは避けた方がよく、半田を扱っう最中には換気を行い(僅かだが気化するため、またヤニを吸い込まないためにも)扱った後は手を洗うくらいは励行した方が良いだろう。
また半田を口にしてしまわないようにお子さんのいるところでは管理には注意した方がよい。

さらに脱線するが、近年では無鉛半田化という流れがあり、欧州ではほどなく鉛半田を使った製品の販売が禁止されるらしい。
無鉛半田は錫、銀、インジウムなどの合金などがある。これは融点がやや高く、高価である。融点が高いので半田付がしづらくなる。
とりあえず日本では禁止という話はないので一般的には気にする必要はないのだが。

半田付けということはどういうことなのか

半田付けというものは接着剤で2つのものをつけるのとはちょっと違う。
半田自体にはいわゆる粘着力はない。
身近な例えをするならば
半田によってものがくっつくということは、冷凍庫の床に氷がはりつくとか、冷凍食品同士がくっついてしまうとか、そういったことに近い。
いうまでもなく水には粘着力はない。

もう少しこの話を考えて見よう。
良く冷えた氷の固まりが手にくっつくという経験はあるだろうか。
このことは以下のようなからくりになっている。
氷に手をつけることで氷の表面が体温によって一旦溶ける。水は皮膚のざらざらしている面に染み込む。
しばらくして氷が手の表面(皮膚)の温度を奪うと同時に一度は溶けた水からも温度を奪い、水は皮膚に染み込んだまま凍ってしまう。
この結果として溶けた水によって氷と皮膚がくっついてしまうわけだ。

実は半田付というのはこれと原理的には同じことと考えられる。
熱を一旦加えるのが半田ごてであって、半田が水か氷に相当してるだけのことである。

長々と脱線しているように見え、でいいかげんに本論にはいらないかとイライラしている方もおられるかと思うが、実はこのイメージというのは非常に重要だと思っている。
半田付の下手な人というのは往々にして接着剤のイメージで半田付をおこなっており、上手な人というのは水と氷のイメージを持っているのではないかと思う。

脱線ついでにもう一歩余計な話をする。

上記の事柄はアンカー効果と呼ばれている。
アンカーとは錨のことで船が停泊するときに流されないように降ろして水底にうちこむことをいう。
なぜ水で皮膚が張り付いてしまうかといえば、皮膚の表面の微小なでこぼこに水が浸透(入り込み)してそのまま凍るとまさしくアンカーをうちこんだかのようになり抜けなくなるためである。

半田付においても半田付する相手の金属というのは一見つるつるであっても実は非常に微小な(顕微鏡でしか見えないような)でこぼこがある。
ここに半田が流れ込んでアンカー効果で張り付く。
だから本当につるつるのものに対しては半田づけはできない。

半田づけができない、というケースでは、もう一つのことに相手の金属が熱をすぐに奪ってしまうために液体状態で染み込む前に固体に戻ってしまうことも多い。
相手の金属を十分に温めてやらないと半田付が成立しないのはこの例である。

これらの対応として相手金属をヤスリ等で傷をつけておくという手がある。
これは相手の(酸化や表面処理での)皮膜をはがしてやる、アンカー効果をかけやすくする、温めた熱がにげにくくするなどの効果があり半田付をしやすくする。

長々と書いたけれども、これらのことは一字一句覚える必要は全くなくて、なんとなくイメージで持っていれば良いことです。
私自身もイメージを文章にあてはめて書き下ろしているだけのことなのですから。

半田付けの練習方法

線を加工する

まず半田付には基板に線をつけるというものがある。
第一歩としてこれから話をしよう。
訓練としても最適である。
つける線を前加工しておくときれいに確実性高く仕上げられる。
細かい作業の場合には必須とも言える作業である。

線を適当な長さに切断し、被覆(皮)を剥く。
つける時の長さより長めに剥いておくのがコツである。
先をつまんで縒りをくわえておく。
そして金属線の部分に半田を付けるわけだ。
まず、こて先は。きれいにしておくこと。
半田ごてで金属線を温める。線の太さにもよるが数秒程度でよい。
数秒経ったら半田の先を小手先と線の両方に接するようにあてる。

すると半田が熔けて紙縒(コヨリ)に水が染みるがごとく、半田が縒った線の間にすっと吸い込まれていくはずである。
このさまを目に焼き付けて欲しい。
これをみると先に述べた熔けた半田は液体である、ということが実感できると思うし、して欲しい。

さて実際にやってみると手が3本欲しいと思えることだろう(笑)
こんなことでいちいち他人の手を借りるのもなんなので、2本でやる方法を考えよう。
・線をテープなどで固定してみる
・半田線をテープで固定してみる
・線の先をちょっと上を向かして半田を付けるだけにしてあとからなじませる
・半田ごての先に半田で濡らしてから線にあてる
などの方法がある。どれがベストというものではなくて時と場合と気分によって使い分ければ良いし他にも色々な手があるだろう。
半田づけできたら先っ端をニッパなどで落とす。ちょっと長めに剥いておいていたのはこのためだ。
先端が少々汚くなってもこれできれいに仕上がる。

半田付の不良という中で割りと多いのが、線のヒゲによる接触というのがある。
線はたいていが複数の細い線である。
そのため、全部の線がちゃんと目的のところにつかずに、そのうちの一本ないし数本がヒゲのように宙に浮いたりあらぬところと接触してしまうことがある。
宙に浮いているのならまだ害はないのだが、なんらかの拍子であらぬところと接触してしまうとこれが誤動作や故障の原因となってしまう。
それを防ぐには上記の前加工をしておくとよい。

文章に書くと実に長いが、作業は一瞬の話である。
線を使うとなると条件反射的にまずこの前加工をしてしまうぐらいあたりまえのこととではないだろうか、と私は思っている。

部品や、部品や基板に線をつける。

基本は3秒。
前に述べたように電子部品というものは10秒程度あたため続けたからといって簡単に壊れるものではない。
むしろ安い線材などで被覆が溶けてしまう方が問題かもしれない。
だから焦る必要はない。
ゆっくりと確実にやろう。
練習は電子キットなどで簡単そうなのから始めるのがよろしいのではないかと思う。
部品や工具を売っているような店ならばおいてあるものだと思う。

最近は詳しい組み立て、半田付の方法などまで書いてあるようなのでそれも参照する。
基本はコテの先で部品(の足)と基板の部分を同時に温める。
コテ先をつけたまま3つ数える。で、半田をこての先っぽもしくは温めている部分に触れるようにしてやる。
するとすっと半田が熔けて流れて染みてくれる。
実際は半田ごてのパワーとつける相手の大きさにあわせて数は融通すれば良いのだがその辺は経験でわかってくるだろう。
というとなんのための解説だかわからないが、こればっかりは仕方が無い。
いくら教科書を読んでも自転車に乗れたりしないし、泳げるようにはなれない。
理屈はここで解説はいくらでもできるが文字だけではどうしょうもない。

基板に線をつける

まず基板の線をつける部分をあたためる。熱容量という言葉があるが、暖まりにくいものを先にこてをあてておく。
そこにハンダを盛っておくのも良いかもしれない。
コテを数秒あてて半田をそのコテ先に添えるような感じで触れてやると熔けた半田が流れて、つくだろう。
この時、ハンダがちゃんと基板についているかを見よう。
ここで思い出してほしいのは、雨の日などでみかける、葉っぱの表面で水玉がまるまっている状態である。
葉っぱの表面が水をはじき、水がまるくなっている。
もし、それと同じようにはじかれているような状態であれば基板に対しての温めが足りないと思われる。
基板が冷たいとハンダがはじかれてしまい、葉っぱの水と同じごとく丸まってしまうのだ。
このようなとき、ちょっと力をいれるとハンダがはがれてしまうこともあり、ついているようでも電気的についていないことも多い。
次に線を持って、盛ったハンダを熔してそこに線の先をいれる。その状態で数秒待つと線もあたたまり、前加工でつけたハンダがとけて基板につけたハンダと一体になる。そうすれば線を基板に確実につけることができる。

補足説明:半田ごて

道具集めの話でもしたが、半田ゴテは場合によっては数種類使い分けるほうが良い。
とりあえずIC類の多い電子工作とかパソコン関係の改造とかなら最も弱い18W程度のIC用の半田ゴテと一番細いコテ先を購入しておけば良いだろう。
これは専門店でしか売っていない場合が多いので機会がある時に入手しておく。
調温機もあったほうが良いだろうか。非常に細かい作業の場合にはコテ先の温度が高すぎると半田がすぐに酸化してしまい、かえってつきにくい場合もある。その場合には温度を低めに保ちたいのだがそのような時には便利である。
大きめの半田ごてでないとできないのは、例えばAC100V関係とかの電源関係の太い線をつけたい時だろう。
この場合は30W程度でもよく、これはホームセンターでも容易に手に入る。

補足説明:半田

半田についても色々な種類がある。線の太さが数種類あるが、IC工作であれば大抵は0.6mm径で良いと思われる。
0.3mmはよほど細かい作業でなければ必要ないし、この記事を真面目に読まれて実践を積んで、もっと細かい作業をやってみよう、というようなレベルであると便利というものである。 普通の電子工作ならば1mm程度のものでよいかもしれない。
これならホームセンターで売っている場合が多いし、適当な長さで購入できる。
それで太いと感じたら専門店で0.6mmのものを購入しておけばよいと思う。
ただし、1リール(糸で一本みたいなもの)でしか買えないので一生分以上あるかもしれない。

ともかくも実践あるのみ

半田付けというのはどちらかというと実践技術である。
薀蓄をいくら並べたところでつけた半田がちゃんとついていなければ何の意味も無い。
まずは電子キットを買って作ってみることだ。
まっとうに考えれば完成品のほうがずっと安いし、何の意味のあるものやらわからないキットもたくさんある。
ある意味、おもちゃであると割り切らないと虚しくなるかもしれない
その先には自分オリジナルのものを作ろうじゃないか、というものもある。
メーカーお仕着せのものではなくてオリジナルを自分で作るという愉しみを味わって欲しいものだと思う。


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