半田づけのノウハウ


半田づけは経験(だけ)

最近は半田づけをする機会が減少しているらしい。
家電製品が故障して中をあけても電子部品で一般には手に入らないような部品だらけでなおしようがないこともあるのだろう。
そのためか、最近は半田付けと言うとパソコンなどの改造や特製ケーブルづくりといったことが多いようだ。
っていうことはいきなりけっこう緻密で繊細さを要求されるということになる。

半田づけのテクニックと言うかコツやらは、できるひとにとってはなんでもないことであり、あたりまえすぎて語られない。
しかし、できないひとにとっては知識がないために上達しがたい、ということもある。
半田づけの上手な人は職人気質という傾向があり、口よりも経験というのもわかる。

しかし、いきなり水の中にぶちこまれて死にたくなきゃ、泳げ、という方法ではなく、あらかじめコツや基本系や上達法、的確な指導法に基づけば上達はより速いはずだ。
でもやっぱり水に入らなければ泳げるようにはならないのは事実だ。

ちなみに、私はどちらかといえば不器用に分類されると思う。

しかし、大工は不器用のほうが上手になる、という説もあるようだ。
器用な人は、小手先でなんとかできてしまうので技術として身には付かないことが多いということなのか。
不器用な人はこつこつと技術として修得するしかない。その違いなのだろうか。

ま、なんにせよ少しでも役立てるよう、半田づけのノウハウというものをいくつか書いておきたいと思う。
半田付けというのは単なる技術スキルにすぎない。別に芸術でもないし、特殊な技術でもないし、難しいものでもないし、天賦の才能なんて必要ない。

工具の解説と購入手引きなど

弘法筆を選ばず、とは名人ならば道具に頼らずどんな筆でも名筆を残す、ということ。
逆にいえば下手ならば道具に頼ってしまえ、と心得よう。
良い道具をカネにあかして買い集めることで腕の悪さを補うのだ、と開き直るくらいでいいと思う。
店としてはホームセンター、DIYショップの類がまず挙げられる。ケーブル類を作る程度のものであればここで十分かもしれない。店によってばらつきが大きいのでなんともいえないが。
パソコンに手を入れるなどのことであれば、専門店でのものを購入したほうが良い。 専門店といえば秋葉原であれば、千石商事、秋月電子、ヒロセ電機、若松通商、ラジオデパートなどがあげられると思う。その手のプロが使うようなものもおいてあるからだ。
秋葉原に行ってLAOX THE COMPUTER館まで辿り着ければもうその近くにある。

半田

そもそも半田とは錫(すず)と鉛の合金である。
なぜこの二つの合金かといえば融点、つまり熱を加えた時の温度が低い、かつ導電性が十分にある、安価である、ということからきている。
混合比率によって融点が異なるという面白い性質を持つ。錫6:鉛4の時に最も融点が低く電子工作用としてはこの比率のものが多いようだ。
融点が低ければ半田ごての温度が低くても作業ができるので部品や基板へのダメージや酸化も抑えられるので好都合である。
太さがいろいろあり、鉄工用の板状のものから、0.3mmφ(径)の糸状のものまである。
通常のIC工作では1.0mm〜0.6mm程度、特に細かい作業なら0.3mmも用意したらよい。
ホームセンターでも手に入るが、細いのは専門店でないとみつからないかもしれない。

ヤニ

ヤニいり半田、のヤニとは松ヤニ(最近は合成かな?)のことである。
電子工作用と書いてあれば普通入っているので心配は無用。
これがあると半田のつきや半田のさらさら感が増し、きれいに仕上げやすくなるという御利益がある。

フラックス

ヤニをアルコールで溶解したものをフラックスと呼ぶ。
溶かしているものがこびんに入って市販されている。
蓋にはけがついているもの(プラスチック用液体接着剤に似たような形状のものがあるとおもう)が使いやすいのではと思う。
これはすでに半田づけされているところでは熱でヤニが飛んでしまっていたりするがそこに塗ることでヤニの項で書いた効果を出す。
また、半田付け前に塗っておくと半田がきれいにのり、さらさらしているので端子にのった半田のうち、余分な分は表面張力でまるまろうとする(水滴がまるくなろうとするのと同じ事だ)ので半田ブリッジを回避する効果もある。

半田ごて

AC100Vの電力を巻き線もしくはセラミック素子により発熱させ金属(こて)につたえる。
電子工作においては静電防止対策済み品は必須で、電力も低いもので良い。
大きくても20W以下で十分である。こてさきはなるべく先の細いものが好ましい。
ホームセンターでもそこそこ細いものが手に入るのでケーブルを作ったり水晶を取り替えたりする程度ならこれで十分だろう。メモリの貼り付けなどもこなせるかもしれない。
もし細い足を持つICを扱うのなら専門店でしか買えないようなものも必要だろう。
まあ、半田ごてなんていうものは何本ももっていてもおかしいものではないし、用途により使い分けることも珍しくない。
電力や太さの違うものを複数本同時に暖めておいて使い分けるのもよくあることだ。

調温器

調温器があればもっとよい。
こて先の温度が高すぎると半田ヤニがすぐに飛んでしまい、半田が酸化したように輝きがなくなりノリが悪くなってしまう。そういうときに温度を落とせると便利だ。
中には半田ごてと一体になっていてこて先の温度を一定に保てるようなプロ仕様のものさえもあるが、これはさすがに高価だし、大量に限られた時間で作業をするわけでもないのでいらないだろう。

また、一緒にこて台とこて先をぬぐう海綿も忘れずに購入しよう。
海綿は安いものなので数個買い置きをしておいてもよいかもしれない。

半田吸い取り線

糸状の銅線を編みあわせたもの。
これに半田を吸い取らせて基板や部品から半田を取り除く為に使う。
一度大量に吸いとるのであれば、半田吸い取り器もあるが、必要ないだろう。
細かい作業の場合は吸い取り線だけで十分である。
数年放置しておくと酸化してしまうのであまり大量に買い込んでしまうと
もったいないのであるが、ないと困るのでどの程度買うかは悩ましいところである(笑)
まぁ、酸化したから使えないというものでもないのだが。

その他の工具

ピンセット

たかがピンセットではなく千円以上のしっかりしたものを選んで欲しい。
不器用を自認する人ほど精度の高い良いものを選ぼう。
もし器用ならばピンセットなど使わずに先を削った箸でも作業できるからだ(笑)。

良いもの、とは先がなるべく細く、しっかりとしているものを選び、先がぴっちりとあわさるものが好ましい。
指で押さえるときに、わざと先をずらす感じで力をかけてもその先はあいかわらずぴっちりと先があわさってくれれば文句はない。何度か動かして感覚が合うかもみてみよう。

長いもの、短いもの、先が斜めのもの、先にぎざぎざのついているもの、色々とある。
ただの金属のもの、セラミック素材のものもある。
基本的には好みで良いと思う。
私は相手のこの手の技術力(熟練度)を見るときの基準はピンセットと半田ごてにある。
この2つをどんなものを持っているか、どのように扱うかでそのひとなりがある程度見えてくる、というのが持論である。

ちなみに私の好みは先がストレート、先にいくにしたがい徐々に細くなっていくタイプのもので先は針のように細くなっているもの。
板は肉厚であること。加えて非磁性体のものはピンセットがいつのまにか磁化してしまい金属ごみがついてきたりしないので安心である。

どのような作業をやるのかで異なるものの、少なくとも細かいIC工作をやろうとするのならば、目安としては机の上の髪の毛をつかみあげられる精度が欲しい、と考えて欲しい。

ホームセンターや薬局で買えるようなものでは先がまともに合わないものも多く、IC工作には難がある。

技術のなさは道具(金)で補うと考えるべきだろう。

なお、技術も金もないけど時間はある、のならば安いピンセットを買ってきてヤスリで先を削るという手もある。
これは時間と根性があればできるし、アルミ素材だろうからそんなに大変でもない。
が、すぐ曲がるしいちいち面倒なのであまりお勧めはしないが。

ワイヤーストリッパー

線の皮膜剥き器。ホームセンターで手に入るものでも特に問題はないとはおもう。
ただし細い線をむくのはそれなりに専門店でしか入手できないかもしれない。
慣れればニッパでも剥けるが、これのほうが楽だし失敗が無い。

ニッパ・ラジオペンチ

いわゆるミニチュア、でよい。
精度のあるにこしたことはないが、さほどでもないだろうか。
むしろプラモ専門店とかのほうが良いものがあるかもしれない。
高精度が必要な場面であまりつかうものでもないし。
ニッパは切るものであるから刃先を合わせた時にがたがたでは話にならないことだけは書いておく。

おまけ

あとは、カッターナイフとか工具箱とか適当に。
半田吸い取り器は昨今では使う場面はほとんどないと思う。
太目の吸い取り線を購入したほうがはるかによいだろう。

これらの物品はプロでは「消耗工具」、つまり消耗品とされている。
使ええば使うほど減ってどんどん精度が落ちていき、使えても使いづらくなったら
途中で廃棄して新品を使う、という感覚を持っている。

半田づけのコツ

半田は接着剤ではない。

つけたい金属と金属の間に半田を溶かしてながしこむ。
片方の金属の表面に半田が染み込み癒着し、もう片方の金属表面でも半田が染み込み癒着することで両者の金属がくっついている。
結果として両者がくっついてるのだ、という感覚を持とう。
逆にいえばつけたいに金属に半田が弾かれてしまうならば半田付けは成立しない。

溶けた半田は液体であるという感覚を持とう。
細かい作業であればあるほどその性質をつかってやることが重要になる。

なにがなにやらわからんと思うので実践的に解説をしていこう。

まずはつけたい金属部をはんだごてで暖める。
なぜかといえば冷たいところに熱い半田を流し込んでも、冷たい金属に半田の熱が奪われ、半田がまるまったまま固まってしまい、結果として弾かれてしまい、つかないからだ。
下手をすると中途半端についてしまい、動作不良の原因にさえなる。
暖める時間は基本は3秒といわれるが対象の金属部分が十分に暖まることが重要であるからその部分の大きさにより変える必要がある。
と初心者向けの解説でいってもわからないだろうからとりあえず3秒としてあとは経験でつかんでいけ、としかないのだろう。
半田ごての大きさにも依存するし、口で説明するのは難しいのは事実だ。

よってまずは参考の為に暖め過ぎることによるデメリットを知っておこう。

・熱によってICが破壊されるかも。
一般に室温状態においては、足を10秒くらい暖めつづけても壊れることはまずありえない。
というのはICは設計上のスペックとして、非通電時ならば、IC全体を200℃くらいで10秒は加熱をされてしまっても壊れないようになっているからだ。
これは自動半田付け機において半田付け処理されても大丈夫であるためのもので一般家庭の製品のICで半田付け処理されるICであればこの要求をを満たすはずである。
壊れる要因はIC内部で足からICの本体チップへの線(ワイヤー)とその接点のはがれ、チップ(一般にシリコンチップ)本体そのものの熱破壊と思われるが、足から接点に行くまでそれなりの距離があるのでそこで温度が下がるし、200℃といえば油揚げ物でも高いくらいの温度であり、普通の人なら触ったら一瞬で火傷を負う温度であろう。触って熱いというレベルではない。
それよりもむしろ静電気による破壊のほうが心配なくらいで、実際の作業ではこの要因で破壊されるケースのほうが多いと思う。
ICの保護スペック以上の静電気というのは冬場なら容易に起きるものだからだ。

・基板のパターンがはがれるかも。
これもそこそこ太いパターンであれば大丈夫だが、糸のような細いパターンだとわりと簡単にはがれてしまう可能性がある。
昔は銅の薄板と樹脂の板を合わせて不要な銅を溶かしだして配線パターンを作るというものだったが、最近は樹脂に銅で印刷するようなものもあり、熱で容易にはがれたりしてしまうので注意が必要である。
力を加えなければ大丈夫なのだが、足をあげたりといった作業で配線パターンごとついてきてしまう、などということもおきかねない。
もうひとつは十分あたたまったところで半田の先で基板をこすってしまいパターンを剥離切断してしまうことだ。
温度上昇自体はさほどかまわないのだがそれで弱まっているところに物理的な力で剥離をしてしまうという事故のほうが多い。

逆にいえばこの程度なのでこのことを頭に入れておけば自然とひどい温度のかけすぎは回避出来ると思うのでまず壊れる可能性はない。
気持ちに余裕を持ってやることで逆に手早く作業をする心構えをもとう。
ICに対しては長時間いじっていて熱を加えすぎかな、と思ったら、ICを冷やしてやるのと同時に自分の頭のほうも冷やしてやるぐらいの気持ちでいるほうが良いのではと思う。

さて両者をあたためている、半田ごての先に、半田の先を軽く触れるだけで半田はとけます。 ちゃんと温まっていれば、半田ごての熱で半田は熔かされて液体となり、重力と毛細管現象と表面張力により勝手にその両者の中に半田が流れ込んでいく、はずです。
細い半田で軽くでは半田が少ないようであればさらにちょっと半田の先をおしこんでやればよいだけのことです。
両者の間でちょっとだけ盛り上がって半田がぴかぴか光っているようなら合格である。

途中で固まってしまったり光沢がいまいちの場合は温度が低いことが考えられる。
半田ごての温度が低いのかもしれない。
半田が熔けた瞬間に白い煙があがったらそれは温度が高すぎる。
多分半田ごての温度が高すぎるので調温器で下げるかW数の低い(温度の低い)こてを使おう。
細かい作業でないのなら気を使うこともないが。

これは練習で頃合を飲み込むしかないだろう。
半田は自然と染み込むもんなんだという感覚を実感できれば合格だ。

この練習には電子工作の組立キットをひとつやれば十分だろう。
おもしろそうなやつをひとつ、初心者向けで十分だ。
なお、自らを厳しく鍛えたい向きには「デカデジタルクロック」(千石で売っている)はお薦めだ。
なにせ表示部分で100個を超えるLEDの半田づけ、つまりここだけで200個所以上の半田をつけてやらねばならないのだ。
技術というよりかなりの根性が必要でそのうちに無意識で半田漬けができるようになっていることだろう。
ちなみに時計としても実用的であり、私自身作ってからはや5年以上、ずっと稼動しつづけている。

いや、それを買う金も惜しい、というのであれば、線材の半田付け(予備半田)でも訓練になる。
手ごろな線の被覆を剥いてその線に半田の被覆をつけてやるのだ。
ゴミとなった家電製品のACコードでもいいし、買ってきた線材でもいい。
線材を必要な長さに切り、両端の被覆を剥いて縒りをいれて半田をいれておく。これは電子工作の基本といえる作業である。納得がいくまでたくさんやってみるのも良いかもしれない。

基礎編の最後に

ながながと書きましたが、ここまでが基礎編ともいうことになります。
長文ではありましたが、これらのことを無意識にうちにやっているものであって、普通は書くまでもないことばかりのことなのですが、あえて、くどいくらいに書いています。
現場でも半田づけなどは入社時にもっていて当たり前のスキルとされていて、なければ何度も失敗してでも自分でちゃんと修得しろ、ということになっていて、そのマニュアルや指導要領などというものは存在していないのが現実ではないのかと思います。

しかし半田付けというのはその仕上がりを見ればその人の経験がわかるというほどの奥の深いものであって、実は半田付けが機械化されていなければそのはんだ付けの仕方で製品の寿命が左右されるとまでいわれるほどのものであり、電波などの高周波回路においてはその性能が左右されることさえあります。
それゆえに芸術とまでいわれることもありますが、実は、そのノウハウ・コツといったものが明文化されていないだけのことなのかもしれません。
今回、このような駄文を発表するのもその私自身の反省、そして僅かでも積み重ねのひとつにならないのかという想い・試みからきています。 私自身もここの文章でうまく表現できていないことがたくさんあり、苦しく、ごまかしているのは承知しています。
[2002.8.13]

追記予定

・半田付けの実践編
・半田の除去のコツ



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